破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「こうして間に合ったんだから、本当に良かったわ。後は神様を前にして、二人で誓い合うだけ。何だか……ここまでもう本当に色々あり過ぎて、過ぎ去った時間が早かったのか遅かったのか……もう良くわからないわ」

「クレメントと別れてから……色々あったわね」

 クレメントはランスロットの近い同僚だからと、一応は招待状を送ることにはなったんだけど、丁重なお断りの手紙と多額のご祝儀を頂いた。

 現在は他の同僚が出席するために仕事を任された彼は、遠征で国境あたりの辺境に居るらしい。

「そうね。あんなクズな事を仕出かした元彼も、いつか誰かと幸せになってくれたら良いなって思えるくらいには……今は、とても幸せよ」

 扉からコンコンと控えめな音がして、私の待っていた人が来たようだった。



◇◆◇



 王都で行われるお祭りは、いつも肌寒くなる直前の季節。

 私はこの時の為にと調達した平民っぽい可愛いワンピースを着て、晴れてこの前に結婚をしたばかりの夫であるランスロットとお祭りデートをしていた。

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