破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
道行く女性が彼に目を留めて注目してしまうのは、仕方がない。彼が今まであまり見たことなどないだろう稀に見る美形であることは、一番近くで顔を観察することの出来る妻の私がとても良く知っている。
貴族がお忍びで街に出ることはままあるものの、私は心配性の兄と一緒でなければ出ることが親から許されていなかった。未婚でクレメントと付き合った時もそうだった。成人も迎えているというのに、兄と一緒に恋人とデートしたくはない。
という訳で、こうして平民っぽい格好で恋人と街歩きデートを産まれて初めて楽しんでいるという訳。
「どれもこれも、美味しそう! 目移りしちゃう。屋台で、何か食べてみたいわ」
「お腹を壊しても、知りませんよ」
ランスロットは、大きな手を私と繋ぎつつ淡々としてそう言った。私が張り切って指差した屋台の前には、数多くの人が待っている列が出来ていて、すごく評判も良くて美味しそうなのに。
「どういうことなの……?」
怯えた目で彼を見れば、ランスロットは吹き出して笑った。
貴族がお忍びで街に出ることはままあるものの、私は心配性の兄と一緒でなければ出ることが親から許されていなかった。未婚でクレメントと付き合った時もそうだった。成人も迎えているというのに、兄と一緒に恋人とデートしたくはない。
という訳で、こうして平民っぽい格好で恋人と街歩きデートを産まれて初めて楽しんでいるという訳。
「どれもこれも、美味しそう! 目移りしちゃう。屋台で、何か食べてみたいわ」
「お腹を壊しても、知りませんよ」
ランスロットは、大きな手を私と繋ぎつつ淡々としてそう言った。私が張り切って指差した屋台の前には、数多くの人が待っている列が出来ていて、すごく評判も良くて美味しそうなのに。
「どういうことなの……?」
怯えた目で彼を見れば、ランスロットは吹き出して笑った。