破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 氷の騎士と呼ばれ、冷徹で人を寄せ付けない空気を纏うことは、このところなくなっていた。だんだんと、表情も豊かになっているような気がする。

 それが仕事として良いことなのか悪いことなのか……私には、わからないんだけど。

 そして、彼に世間知らず過ぎることを揶揄われたとわかった私は、ムッとして顔を顰めた。

「すみません。ただの冗談ですよ。ですが、あれは平民が歩きながら食べるもので、貴族のディアーヌはこれまでに絶対食べたことがないものですよ。良いんですか?」

「もちろん。良いに、決まっているでしょう? 食べたことのない美味しいものなら、いくらでも食べたいわ」

「本当に大人しそうな顔に似合わず、向こうみずな挑戦者ですね。では、僕が買ってきますので、この辺に座っていてください」

 ランスロットは、噴水を取り巻く円形のベンチのようなものを指差した。私はきょとんとして、それと彼の顔を見比べた。

「私も、一緒に並んでみたいんだけど……」

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