破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 物思いに耽っていた間に、仕事の速いラウィーニアはドレスに合うアクセサリーや靴など、すべて決めてしまったみたい。テキパキとしていて、判断しておくことや、やるべき事を後には回さない。未来の王妃に以下略。

 ここまでやっておいて貰ってなんだけど、当の本人である私はまだ夜会に行こうという、前向きな気持ちにはなり切れないでいた。

「ラウィーニア。やっぱり、私……」

 弱気な気持ちに負けそうになった私の言葉を、ラウィーニアは片手を上げて遮った。

「ディアーヌ。今悩んでいる大きな理由がクレメントの事なら、それはお門違いよ。元彼とライバルだからって、何なの。ランスロットと直接話して、彼がどんな人なのかを確認するのが先でしょう? もし、クレメントと張り合いたいだけのバカ男なら、丁重にお断りすれば良いでしょう。はい。私の今から言う言葉を、復唱してくれる? クレメントとは、終わった」

「クレメントとは、終わった……」

 満足そうに頷いたラウィーニアは、私と同じ色合いの薄紅色の瞳で真っ直ぐに視線を合わせた。

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