破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 最初のダンスは、主催者コンスタンス様とそのパートナーのラウィーニアで麗しい二人が踊り出す。そうして、曲の節ごとに徐々に高位の貴族達から順に踊りの輪が広がる。ファーストダンスは、恋人同士そして決まった婚約者や夫婦で踊る。

 若い未婚の令嬢の流行りは青系だけれど、既婚の貴婦人達にもそれはそれで流行がある。そして、外国からの賓客たちの民族衣装も加わり。眩しい大広間に美しく鮮やかな、色とりどりのドレスが回る。

 ぼんやりとただ踊る人たちを見ていただけの私に、背後から聞き覚えのある低い声が聞こえた。

「ディアーヌ嬢」

「……グラディス様」

 私がこの場に来る主な理由になった、氷の騎士ランスロット・グラディスがすぐそこに居た。

 この前、庭園で会った彼は、王宮騎士団の通常時着用する灰色の騎士服を着ていた。けれど今は、こういった正式な夜会などに彼らが纏う黒い騎士服を着ていた。

 ランスロットとこうした夜会の席で近くで会うのはこれが初めてだけれど……控えめに言って、うら若き乙女なら見ただけで思わず色気にあてられて倒れてしまうほどに、輝かしく素敵だった。

< 34 / 254 >

この作品をシェア

pagetop