破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
こうした夜会では飲み物を楽しみつつ、談笑することが多い。だから、彼はとりあえず踊るより前に私と話したいということが知れた。
残念なことに、ハクスリー伯爵家は家系的にお酒はあまり強くない。緊張を解そうにも、肝心の聞きたいことが聞けない状況になるのはあまり良くないと判断した。
「……いいえ。会場に入った時に、勧められて少し飲んだばかりなので。もしランスロット様が良ければ……話をしにバルコニーに出ますか?」
ダンスをして動いて夜風が当たることの出来るように、大広間のバルコニーはすべて開放されている。きっと聞き耳を立てているだろう周囲の気配も気になっていた私が指差したここから近いバルコニーに続く出入り口見て、彼は表情も動かさずに頷いた。
「どうぞ」
ランスロットはこんなに短い距離だというのに、私をエスコートするように手を差し出した。特に意識することなく、自然とその大きな手を取った。私たち貴族令嬢にとっては、幼い頃から様々な場面でエスコートされることは当たり前のことで慣れている。
だけれど、その手が細かく震えている事を感じたのは初めてのことだった。
残念なことに、ハクスリー伯爵家は家系的にお酒はあまり強くない。緊張を解そうにも、肝心の聞きたいことが聞けない状況になるのはあまり良くないと判断した。
「……いいえ。会場に入った時に、勧められて少し飲んだばかりなので。もしランスロット様が良ければ……話をしにバルコニーに出ますか?」
ダンスをして動いて夜風が当たることの出来るように、大広間のバルコニーはすべて開放されている。きっと聞き耳を立てているだろう周囲の気配も気になっていた私が指差したここから近いバルコニーに続く出入り口見て、彼は表情も動かさずに頷いた。
「どうぞ」
ランスロットはこんなに短い距離だというのに、私をエスコートするように手を差し出した。特に意識することなく、自然とその大きな手を取った。私たち貴族令嬢にとっては、幼い頃から様々な場面でエスコートされることは当たり前のことで慣れている。
だけれど、その手が細かく震えている事を感じたのは初めてのことだった。