破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 なんとも意味深でどうとも取れるような答えに、私はムッとした。ランスロットにも、それはすぐにわかったと思う。私の不機嫌を悟り憂いを帯びた視線が、見て取れたから。

「ランスロット様。もうこの際、はっきりと言います。私に対して、何か……前に付き合っていたクレメントの事でも何でも。純粋に恋愛感情以外で、他に含みのあるような事があるのなら、もう二度と関わらないで欲しいの。二人の争いに巻き込まれて、何かに利用されるなんて……絶対にごめんだから」

 このところ自分の中でもやもやして思い煩っていた事をふり切るように、キッパリと言い切った。そして、ランスロットの美しい目を見上げた私に対し、彼は軽く吹き出して笑い声を上げた。

 不意を突かれて、思わずぽかんとしてしまった。

 鉄面皮であるはずの氷の騎士に似つかわしくない、とてつもなく可愛い笑顔だったからだ。もし彼が普段もそんな表情で居たならば、きっと彼はもっともっと人気になっているかもしれない。

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