破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
彼は特に不快な何かを思わせる訳でもないけれど、まさか上品である事が尊ばれる貴族令嬢がこんな事をするとは思っていなかったせいか。あまりの驚きのためだろう、ランスロットは微動だにせず固まっている。
当たり前だ。
出会いの場である夜会に来て美形騎士に、熱心に口説かれている。乙女の誰もが夢に見るような憧れの場面なのに、甘い雰囲気に酔わずに彼の両頬を摘む貴族令嬢、居ます? ここに居ます。
無意識に自分がとんでもない事をしていた事に気がついて、慌ててパッと手を離す。
「ごめんなさい。もしかしたら、表情が動きにくいのかなって思ったら……無意識に。本当に……もう言い訳も出来ないけど、失礼をしてごめんなさい」
私の顔は、とても赤いと思う。今はもう、恥じらっているという事実を前面に出して彼に許しを乞うしかない。主に、先程せっかく甘い雰囲気を出してくれようとした彼に対して。
「いいえ。すみません。僕も自覚はあるんですけど、どうしてもどうにもならなくて。こうして僕の表情が動きにくいのは、家系なんです。現在のグラディス家の人間は、嫁いで来た母以外はこうした顔をしています」
当たり前だ。
出会いの場である夜会に来て美形騎士に、熱心に口説かれている。乙女の誰もが夢に見るような憧れの場面なのに、甘い雰囲気に酔わずに彼の両頬を摘む貴族令嬢、居ます? ここに居ます。
無意識に自分がとんでもない事をしていた事に気がついて、慌ててパッと手を離す。
「ごめんなさい。もしかしたら、表情が動きにくいのかなって思ったら……無意識に。本当に……もう言い訳も出来ないけど、失礼をしてごめんなさい」
私の顔は、とても赤いと思う。今はもう、恥じらっているという事実を前面に出して彼に許しを乞うしかない。主に、先程せっかく甘い雰囲気を出してくれようとした彼に対して。
「いいえ。すみません。僕も自覚はあるんですけど、どうしてもどうにもならなくて。こうして僕の表情が動きにくいのは、家系なんです。現在のグラディス家の人間は、嫁いで来た母以外はこうした顔をしています」