破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私はすぐ傍にあったランスロットの筋肉質な腕を取りながら、言った。クレメントは短気だ。けれど、そこまではバカではないから、周囲に醜態を見せる前に消えてくれればと思ったから。

 クレメントはとてもわかりやすく嫌な表情を浮かべると、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「なんだよ。ついこの前まで、俺の事を好きだ好きだとうるさかった癖に、すぐに次に乗り換えたのか。この俺と付き合っていたのに、クソ真面目なランスロットと話していて楽しいか?」

 自信満々なその表情も、以前は好きだと思っていた。今はもう彼に何を言われたところで、別れの時のひどい言葉が蘇る。決して消えることのない、痛みを伴って。

「ええ。とっても。ランスロット様と話して居れば、いつもお腹抱えて笑っちゃう。せっかく声を掛けてくれて嬉しいんだけど、時間がないから私達もう行くわ」

 そう言って私は何も言わずに寄り添うランスロットと一緒に、ゆっくりと大広間の出口まで出た。人目がなくなったのを確認してから早足で影になっている場所に辿り着いて、大きく息を吐く。

「……我慢を、していたんですか」

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