破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 ラウィーニアがさっき教えてくれた訓練場は、広い城から出て詳しい特徴を聞いていない私にもすぐに知れた。大きな丸い円錐状の白い建物。何かを切り裂くような攻撃魔法の音が、中から聞こえたから。

「今日も、とても激しそうね。ディアーヌ。私達の観戦する場所は、絶対に大丈夫だとは思うんだけど……もし気分が悪くなって倒れそうになったなら、言ってね」

 ラウィーニアは歩きつつ、隣の私の顔を覗き込んだ。確かに、私はこういった戦闘を観戦するのは初めてだ。けれど、見ただけで倒れてしまうまでの戦闘……?

「そんなに……倒れそうになるの?」

「見れば、すぐにわかるわ」

 肩を竦めたラウィーニアに続いて、私は大きな訓練場の中へと歩を進めた。私たちが案内された場所は透明な硝子で前方が大きく開かれた、いわゆる貴賓席のような場所。

「……すごい」

 パッと見ただけなのに思わず絶句してしまうほどに、激しい戦闘だった。

 これって、単なる訓練だったよね。そう何度も聞いているけれど、実戦さながらに繰り出される攻撃魔法も凄まじく、剣戟の音が鳴り響き、余りに動きが素早くて目で追うのも苦労するほどだった。

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