破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私たちが入ってきてすぐに丁度彼らは休憩時間に入ったのか、全員が所定の位置へと戻って行く。

「私も、初めて見た時は驚いたもの。あら。お目当ての氷の騎士は……着替え中かしら?」

 ラウィーニアが見た方向には、王宮騎士団でも有名な筆頭騎士三人が集まって居た。いつもなら、そこに他の二人……ランスロットやクレメントも居たはずだったんだろう。

 ラウィーニアは、訳がわからないという様子で首を傾げて困り顔だ。如才のない彼女がこうして不思議そうにしているという事は、彼女が私に見に行こうと言ったランスロットは、この訓練場には来ているはずなのに今この場所にいないと言うことになる。

「あの……私が、ちょっと見て来るから。ラウィーニアは、ここにいて」

 なんとなく、ざわざわと胸騒ぎがした。良くわからない形容しがたい勘のようなもので、虫の知らせがしたと言っても良い。

 ひどく、悪い予感だ。

 ラウィーニアの応えを聞く前に、部屋を出た私はさっき上がってきた階段を下りて、そこで聞き覚えのある低い声に辿り着くことになる。

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