破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「……とは言ってもね。一生ベッドの上で生活する訳には、流石にいかないでしょう? ねえ、急だけど私。コンスタンスと、海辺の街に婚前旅行に行くことになったのよ。世継ぎの王太子の結婚式をするとなれば、準備や来賓の接待なんかで、当分はゆっくりなんて出来ないから。私がディアーヌも一緒に連れて行きたいと言ったら、彼も是非来て欲しいと言っていたわ。コンスタンスもディアーヌと一度話してみたいと言っていたから。そろそろ外に出て、海の綺麗なところで少しでも気晴らししましょうよ。最低男のことなんて、もう忘れてしまいましょう」

「でも……」

 愛するラウィーニアの従姉妹の事だからとは言え……王太子殿下に気を使わせてしまって申し訳ない気持ちには、一応なった。

 それに……やんごとなき身分である彼が移動すると言うことになれば、もしかして。

「ねえ。この手紙の山は、やっぱりまだ読んでないの? こんなに、沢山……話だけでも、聞いてあげたら?」

 机の上に折り目正しく積み上げられ、少し突けば崩れそうな封を開けていない手紙の山を見て、ラウィーニアは大きく溜め息をついた。

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