破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 もし、謝罪の手紙をこれでもかと数を出して、罪が赦されるのなら。もし何かの後悔がある人なら誰だって、きっとそうしている。

 けれど、許す立場にある私の気持ちを決めることが出来るのは私だけのはず。

「一年も……一年もあったのよ。ラウィーニア。クレメントと付き合っていた私に彼が真実を話す気になれば、その間に幾度の機会があったと思う? あの人に好きだよと言われて、浮かれて。最初から、全部騙されていたのに。バカみたいに……私……」

 また、心の中にある暗い穴の中に落ちてしまいそうな私の肩を軽く何度か叩いて、ラウィーニアは隣に座った。

「ねえ、お願い。聞いてディアーヌ。あれから少し時間が過ぎて、貴女も少しは落ち着いたと思うんだけど。傍目から見ても、デビューしてすぐに、美形の騎士に言い寄られて。自分でも、ひどく浮かれていた自覚は、あったでしょう? 本来の自分を押し殺して無理してでも、彼と一緒に居たかったのよね。あんなに純粋に恋をしている目をしている女の子に、君は騙されているから早く目を醒ませと……彼が言えなかった気持ちは、私も理解出来るわ」

「ラウィーニア……でも」

< 66 / 254 >

この作品をシェア

pagetop