破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私とラウィーニアが階段で宿屋のロビーに降りれば、彼女が早く早くと急かした理由が理解出来た。人待ち顔の美男子二人。しかも、絶対に私待ちだった。今護衛しているのはランスロットだから、としか聞いていなかった。早く言って欲しかった。

 美々しいコンスタンス様とランスロットがそこに二人並んでいるだけで、注目を集め絶対にお忍びにはなり得ないような気もする。けれど、護衛の彼は王太子様の仰せには逆らえない立場なのだと思う。

 それに、愛しい婚約者と少し街歩きをしてみたいと思っても、仰々しい護衛を引き連れていかねばならないコンスタンス様の気持ちを考えると切ない。

「ディアーヌ。ここ何日か会えなかったけれど。快適に、過ごせていた?」

 挨拶もそこそこに、我が国の王太子殿下であるコンスタンス様は私に話し掛けてくれた。代々続く王族のみが纏うことの出来る後光が差しているのを感じるようなカリスマ性を持つ彼を、出来るだけ避けていた自覚のある私は曖昧に笑う。

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