破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 別に彼が嫌いとか、そういう訳で避けていた訳でもない。話しやすく頭が良い機転も利く人で、割と好きな方だ。けれどラウィーニアとセットになってしまうと、独り者が勝手に傍に居るのが居た堪れなくなるだけ。彼は別に何も悪くない。

「こちらに共に連れて来て頂いて、本当にありがとうございます。良い気分転換になって、凄く快適に過ごせています」

「……いや。この僕も美女に囲まれれば、やはり気分が良いからね。いつもは、難しい顔をした大臣達と雲を掴むような面倒な政治の話だ。本当に、うんざりするよ」

 コンスタンス様は肩を竦め、彼の少し後ろの位置に護衛として控えていたランスロットに目配せをした。彼は仕事上の事を伝達していますと言わんばかりに、淡々とした口調で私に向かって言った。

「ディアーヌ嬢。本日の設定は、男女二組でお忍びの貴族が街歩きをします。僕以外にも、護衛が数人が姿を隠して見えないように付いて来ますが、貴女もそのつもりで居て下さい」

「男女二組……」

 それを聞いて、ぽかんとした。コンスタンス様とラウィーニアは、どう考えても恋人同士だ。今この時も、見つめ合い目と目で語り合っている。

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