破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 と言うことは、ランスロットの担当は私になる。

「そうよ。せっかく、ここまで旅行に来たんだもの。買い物だって、ゆっくりと楽しみましょう」

 ラウィーニアは、コンスタンス様の腕を取りながら笑った。微笑み合う愛し合っている二人。寂しい独身者の私には、目の毒でしかない。

 これはどう考えても、色々とあった私のためだ。名目上は王太子の気まぐれとは言え、多分話したくても話せない私とランスロット二人のために、コンスタンス様が気を使ってくれたのだと思う。

「どうぞ」

 ランスロットは、短く言って私に手を差し出した。

 彼にはそれは、仕事の一環のはずだった。久しぶりに触れた指先は、やはり震えているようだった。これ以上ないくらいに平静な表情に見えるのに、緊張をしているのかもしれない。

 それを知り、何だかむず痒くなるような気持ちになった。

 こんなにも素敵な人が、自分の事を好きなのだと実感してしまうと何だか不思議だった。そういえば、社交界デビューの時に彼は私に声をかけるつもりだったと言っていたから、もし彼が見初めてくれたのならそれより前になる。

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