破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 あの黒いもやもやとした煙……王太子の婚約者を狙う呪いを運んできたと思われる子どもたちは、ご褒美の飴を貰って誰かからの指示通りに私たちの傍を通り抜けただけだと証言したとの事だった。それであの子たちは、あの時に手に棒付き飴を持っていたという事だった。

 厳めしく顔を歪めて王者の風格を持つコンスタンス様の「なんとかしろ」という圧の強い視線に晒され、別に彼が悪い訳でもないんだけど、たっぷりとした黒い生地のローブを身に纏う魔術師リーズはどうしようと困り顔だ。

 チラッと私の救いを求めるような目で見て、同じような視線で見ている事に気がついた彼はより一層頭を抱えた。

「とは言っても……これは、ただの呪術であるとは言えません。東の地ソゼクに伝わるという呪術的な……僕たちの扱う魔法とは、似てはいますが全く形態が全く異なるものです。思いつく限りで、たったひとつ可能性があるとすれば……グラディスの想い人である女性が、東の森に住む魔女の元へ向かうしかないと思います」

「一応は……心当たりはあるが彼女は、貴族令嬢だ。東の森と言えば、強い魔物も棲み危険なことで知られている。何か、他に方法はないのか」

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