破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 コンスタンス様は、ちらりと私を一瞥した後にリーズへ他の策を提示するように促した。けれど、困り顔のリーズは首を振るばかりだ。

「いいえ。あの魔女は東の地ソゼクから逃れるようにして、あの森に住んでいます。我が国に住まわせる代わりに、東の地ソゼク秘伝の霊薬などを納めるという契約をしてあの場所に。彼女は人嫌いでも知られていますし……呪術の根幹であるものに最も関わりがある、その女性と……出来れば、筆頭騎士程度の強い護衛一人を。その程度の人数であれば、気難しい魔女も特に警戒せずに、こちらの依頼内容を聞いてくれるかと思います。そこからは、魔女は気まぐれなようなので、聞いてくれるかは運次第ですかね」

「私。行きます」

 ランスロット・グラディスの想い人であるという、良くわからない自覚はあった。一応彼からも、正式に告白はされている。決意を込めた私の言葉を聞いて、コンスタンス様とリーズは何かを伝え合うようにして、お互いに目を合わせた。

 早くしてと言わんばかりに真っ直ぐに彼に視線を向ける私を見て、コンスタンス様は思案するような表情になった。

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