破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
 私たちの目指す魔女の住み処は、森の奥にありその場所へはクレメントの移動魔法では行けない。どうやら魔女が自分の身を守るために、幾重にもこの森に守護魔法を掛けているらしい。

 東の森は鬱蒼とした緑深い森で、狩人くらいしか通らないだろう獣道は整っているとはとても言えない。足場を気をつけていたはずの私が、木の根に足を引っ掛けて転びそうになったところを、近くを歩いていたクレメントは咄嗟に二の腕を持って支えてくれた。

 過去の悪行が頭を掠めどうしても顔を顰めてしまうのは、仕方ないとしても。転んでしまいそうだったのを助けてくれたのは、確かだ。

「……ありがとう」

 とても感じの良い感謝だとは言えないけれど、彼も自分が過去何を仕出かしたかを思えば文句は言えないと思う。

「……悪かったよ」

「謝られても困るから。もう、謝らなくて良いよ」

 大袈裟なくらいにプイッと彼から顔を背けて歩き出した私に続いて歩き、クレメントは苦笑しつつ言った。

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