破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「ディアーヌ。お前……前から、そんな性格だったっけ。それだったら、俺もお前とまだ一緒に居たかも。なんで、あんな大人しくて自分の言いたいことも言えなさそうな猫をかぶってたの?」

 クレメントの心底不思議そうな言葉に、怒りで頭が沸騰しそうにはなった。今はもう他人とは言え、そんなこともわからない人だったんだと思うと怒りが湧いてくる。

 私は一回大きく息を吐き、なるべく自分の心を落ち着かせて言った。

「……好きな人には、好かれたかったからに決まっているでしょう。私が、一番良いと思っていた自分を見て欲しかったからよ」

 魔物の多い森の中で周囲を警戒しつつ彼は、私の隣をゆっくりと歩いた。

 ちなみに今は乗馬時のような長いズボンを着て動きやすい格好をしている私は、これでも自分では速く歩いているつもり。どんなに腹を立てても、足の長さはどうしようもない。出来ればすぐに引き離して歩いて行きたいくらいの、やり場のない怒りはあるんだけど。

< 97 / 254 >

この作品をシェア

pagetop