【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「どうして?クララの気持ちがコーエンに向いているから?」


 出会った頃はさておき、最近のクララを見れば、彼女の気持ちは一目瞭然だった。普段は実年齢より落ち着いた印象のクララが、コーエンの言動に一喜一憂している様子を見るのは、傍から見ていて微笑ましい。


「そうだったらどんなに良いか」

「……んん?」


 コーエンは盛大なため息を吐きながら、切なげに瞳を細める。またもや想像外の反応だ。フリードは目を丸くした。


「わっかんねぇんだよな、あいつ。近づけたと思ったら離れていくし。俺見て嬉しそうに笑ってると思ってたのに、いつの間にか泣きそうな顔になってるし。この間も、俺のイヤリングは着けない癖にヨハネスの髪飾りは着けてたりとかさ……」


 話している内に興奮したのか、コーエンは己の髪の毛をガシガシとかき乱す。


(まさか、こんなにもコーエンを振り回す存在が現れるとはねぇ)


 そんなことを考えながら、フリードはこっそり舌を巻いた。


「なぁ、女って皆こうなの?」


 至極真剣な表情でフリードを見つめながら、コーエンが尋ねる。
 フリードはしばらく何も言わず黙っていたが、ややして小さく笑いながら大きく伸びをした。


「……まさか、お前にそんなことを尋ねられる日が来るとはね」

「いや、俺は必要ならば藁にだって平気で縋る男だぞ」

「人を藁扱いするなよ」


 ケラケラと笑いながら、軽口を叩き合う。こんな日々を今後も続けられるかは、クララの存在に掛かっているといっても過言ではない。


(できたら、ボクだけじゃなくて皆が幸せになれると良いのだけど)


 そんなことを考えながら、フリードはそっと微笑んだ。




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