【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(いけない、すっかり遅くなっちゃった)


 クララは誰もいない中庭を駆け抜けながら、息を切らしていた。

 少し礼部にお遣いに出掛けたはずなのに、頂上で輝いていたはずの太陽が、今は西の空に沈みかけている。

 クララ自身の用事は早々に終わったのだが、その後何やかやと文官たちに呼びかけられて、気づけば小一時間が経過していた。

 手には文官たちから貰った抱えきれないほどのお土産。日持ちする茶菓子や部屋で飾るのに丁度いい花束、王都で流行っている本、といった品々だ。


(やっぱり皆、王子には媚びを売っておきたいものなのね)


 内侍であるクララが良い印象を持てば、それは王子であるフリードに伝わる。
 おいそれと近づけない王子ではなく、手頃な存在であるクララを使って点数稼ぎをすることは、とても合理的なように思えた。


(だけど、こうも多いとちょっと大変)


 抱えきれないからと断ることもできない辺り、クララの処世術はまだまだ未熟だ。

 スカートの裾を持ち上げて受け皿にして走っているため、こうして中庭を隠れるように移動せねばならないし、落とさないように気を張るので、結構疲れる。


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