【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

18.厳つい王子の思わぬ素顔

 クララは目の前の光景が信じられぬまま、呆然と立ち尽くしていた。


(……この人は一体誰?)


 普段は厳めしい表情に威圧感バリバリのこの国の第1王子カールが、顔を地面に擦りつけんばかりに身を屈め、あられもない表情で笑っている。薄汚れた仔猫を何度も撫でつけ、その愛らしさを下から観察している様は、傍から見ていて滑稽だ。とても、同一人物とは思えない。


「可愛い。…………可愛い」


 堪えきれないといった風に、時折ボソボソと漏れる呟きが、辛うじてカールらしさを残していると言えなくもない。

 仔猫はカールの指をペロペロと舐めながら、甘えるように頬を擦りつけている。あまりに可愛らしい仕草で、クララの心臓もキュンと跳ねる。当然、カールは堪え切れるはずもなく、悶絶しながら急いで顔を逸らした。


「………あ」


 その瞬間、クララとカールの視線がバッチリかち合う。
 クララの身体中の血の気が一気に引いた。


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