【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「ここはフリードの宮殿に近かったな」
クララの必死の訴えに何も答えぬまま、カールはそんなことを言う。何故、という疑問を抱くより先に、クララは姿勢を正していた。
「は、はい。目と鼻の先です」
「ならばすぐに宮殿に戻り、ミルクをここへ持ってこい」
「……へ?」
なにを言われたか上手く呑み込めず、クララは小さく首を傾げる。
「ヤギの乳を持って来いと言ったのだ!今、すぐに!」
「はっ、はい!」
まるで騎士へ命令を下すかのような調子でカールは声を張る。クララはビクリと身体を震わせながら、すぐに踵を返した。
「走れ、バカ者!」
「はいぃ!」
クララは半ば悲鳴に近い声を上げながら、宮殿へと走った。走っている内に緊張が抜け、段々と冷静さが戻ってくる。
(そうか、殿下は猫にミルクがあげたかったのね)
考えてみれば彼の望みは単純明快なものだ。けれど、その命令口調と威圧感から、クララはまるで戦地に赴くことを命じられたような心持になっていた。
言われた通りクララは宮殿に戻り、侍女たちの詰め所で必要なものを貰うと、また急いでカールの元へ走る。
途中コーエンに呼び止められたような気がしたが、それどころではない。気づかぬふりをして、必死に走った。
クララの必死の訴えに何も答えぬまま、カールはそんなことを言う。何故、という疑問を抱くより先に、クララは姿勢を正していた。
「は、はい。目と鼻の先です」
「ならばすぐに宮殿に戻り、ミルクをここへ持ってこい」
「……へ?」
なにを言われたか上手く呑み込めず、クララは小さく首を傾げる。
「ヤギの乳を持って来いと言ったのだ!今、すぐに!」
「はっ、はい!」
まるで騎士へ命令を下すかのような調子でカールは声を張る。クララはビクリと身体を震わせながら、すぐに踵を返した。
「走れ、バカ者!」
「はいぃ!」
クララは半ば悲鳴に近い声を上げながら、宮殿へと走った。走っている内に緊張が抜け、段々と冷静さが戻ってくる。
(そうか、殿下は猫にミルクがあげたかったのね)
考えてみれば彼の望みは単純明快なものだ。けれど、その命令口調と威圧感から、クララはまるで戦地に赴くことを命じられたような心持になっていた。
言われた通りクララは宮殿に戻り、侍女たちの詰め所で必要なものを貰うと、また急いでカールの元へ走る。
途中コーエンに呼び止められたような気がしたが、それどころではない。気づかぬふりをして、必死に走った。