【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「さっき、さ」

「ん?」


 唐突に話を切り出したクララに、コーエンは首を傾げる。俯きがちに何度も瞬きをしながら、クララはそっとコーエンを見上げた。


「…………色々と生意気なことを言って、ごめんなさい」


 少なくともこの男は、クララよりも前からフリードの側にいた。側にいて、彼の仕事を支えていたのだ。きちんと敬意を払うべきだったというのに、ひどい態度を取ってしまった。
 コーエンは目を丸くして、クララをまじまじと見つめる。しばらくの間、気まずい沈黙が二人の間に横たわった。


(何か言ってよ)


 クララはそっと唇を尖らせる。すると、コーエンはややしてから声を上げて笑った。


「ん~~?何がどう生意気なのか、俺にはちっとも分からねぇな」


 先程までの意地悪い笑みとは異なる満面の笑み。
 コーエンは、せっかく綺麗にセットしたクララの髪の毛を、ガシガシと撫でながら、遠慮なく乱していく。


「ちょっ、ちょっと~~~~」


 必死で手を振り払いながら、クララは頬を染めた。


(変な人)


 気にするな。遠回しにそう伝えてくれる辺り、案外優しい人なのかもしれない。クララはコーエンに気づかれぬよう、小さく笑った。


「ハンス、見て」


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