【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

19.クララの逢引き相手

「なぁ、クララ」

「えっ……?なに?」


 執務室の扉に手を掛けたところで呼び止められ、クララはそろりと後ろを向く。


「おまえ、最近この時間になると絶対にどっかに行くよな?」

「そんなことないけど?」


 コーエンの問いかけに、クララは心臓をドキドキと鳴らす。


(ヤバい……急がないと、また叱られてしまう)


 そわそわと視線を彷徨わせながら、クララはコーエンに微笑みかけた。


「破滅的に嘘が下手な奴」

「えぇ!?」


 コーエンはツカツカとクララの方に詰め寄ると、不機嫌そうに目を細めた。


「さっきからずっと顔が引き攣ってるし、足はそわそわ動いてるし、何度も扉の方振り向いてさ。何?逢引きの相手でも出来たわけ?」


 すぐ目の前にコーエンの顔が迫る中、クララはムッと唇を尖らせる。大きく深呼吸を一つして、視線を絡める。


「――――――よく分かったわね」


 その瞬間、コーエンだけじゃなくてフリードの顔もピシャリと音を立てて引き攣った。

 クララは嘘は吐いていない。こうしている間にも、相手はクララとの逢瀬を今か今かと待ち構えていることだろう。そう思うと、ついつい顔がにやけてしまう。


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