【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
 その時、クララのものとは異なる、若い女性の声が響いた。
 顔を上げると、少し離れた所に人影が二つ見える。双方がゆっくりと歩み寄り、段々とぼやけていた人物像がハッキリとしてきた。

 一人はフリードとよく似た栗色の髪の毛に、彼よりも少し恵まれた体格。左目の下にある涙ボクロが特徴的な男性だ。

 もう一人は、オレンジ色の裾の長いドレスに身を包んだ、小柄な女性。蜂蜜のような色をした長いブロンド髪、大きな青い瞳、バラのような色の頬が愛らしい。年のころはクララと同じか、一つ下ぐらいに見える。


(あれ?ハンスって確か……)


 クララはそっと膝を曲げ、淑女の礼をする。


「ははっ、さすがフリード。よく躾けられているね」


 そんな声が頭上で響く。コーエンの声とは異なるため、これはハンス――――第2王子、ヨハネスのものだろう。彼の顔は、以前出席した夜会で見かけた第2王子の顔と一致していた。

 クララは頭を垂れたまま、ひっそりと唇を尖らせる。

 フリードとは今日初めて会ったのだ。躾けられたもクソもないのだが、相手は王子だ。反応せずに黙っておくのが得策だろう。
 しばらくして「楽にしていいよ」と再びヨハネスに声を掛けられてから、クララはゆっくりと頭を上げた。


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