【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「…………仕方がない。ここはジェシカの奴に頼むか」
「ジェシカ?」
クララはカールの言葉をおうむ返しにしながら、ドクンと嫌な音を立てる胸を押さえた。
忘れもしない。それはコーエンの想い人の名前だ。
ジェシカがどこの誰なのか、どんな人なのか、クララは知らない。知ろうともしなかった。けれど、こんな所で話題に上るとは。
「こら、ジェシカ『殿下』だろう。あいつはああ見えても俺の妹だぞ」
「えぇっ!?」
クララは今度こそ、驚きを隠せなかった。
(――――ジェシカ殿下)
滅多に公の場に出てくることも、名前が話題に上ることも無い。けれど、思い返してみれば確かにクララはその名――――この国唯一の王女のことを聞いたことがあった。
(そうか……コーエンは王女様を…………)
王女とは人質とも成り得る重要な駒。そんな貴重な存在を一貴族が妻に望むことは容易くない。
余程武勲を上げたとか、名門であるとか、色々と必要とされる条件がある。
だからコーエンは、フリードを王太子とし、ジェシカを妻として迎え入れられるよう奮闘しているのだろう。
クララはようやく色んなことがストンと腑に落ちた気がした。
それと同時に、この恋が出口のない迷宮のように感じられる。
王女相手に勝ち目なんてとてもない。けれど、コーエンはきっとクララを放っておいてもくれない。愛するジェシカとの未来のために平気でクララを犠牲にするだろう――――。
「ジェシカ?」
クララはカールの言葉をおうむ返しにしながら、ドクンと嫌な音を立てる胸を押さえた。
忘れもしない。それはコーエンの想い人の名前だ。
ジェシカがどこの誰なのか、どんな人なのか、クララは知らない。知ろうともしなかった。けれど、こんな所で話題に上るとは。
「こら、ジェシカ『殿下』だろう。あいつはああ見えても俺の妹だぞ」
「えぇっ!?」
クララは今度こそ、驚きを隠せなかった。
(――――ジェシカ殿下)
滅多に公の場に出てくることも、名前が話題に上ることも無い。けれど、思い返してみれば確かにクララはその名――――この国唯一の王女のことを聞いたことがあった。
(そうか……コーエンは王女様を…………)
王女とは人質とも成り得る重要な駒。そんな貴重な存在を一貴族が妻に望むことは容易くない。
余程武勲を上げたとか、名門であるとか、色々と必要とされる条件がある。
だからコーエンは、フリードを王太子とし、ジェシカを妻として迎え入れられるよう奮闘しているのだろう。
クララはようやく色んなことがストンと腑に落ちた気がした。
それと同時に、この恋が出口のない迷宮のように感じられる。
王女相手に勝ち目なんてとてもない。けれど、コーエンはきっとクララを放っておいてもくれない。愛するジェシカとの未来のために平気でクララを犠牲にするだろう――――。