【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「というかおまえがジェシカを知らぬはずが無かろう」

「えっ?すみません……お名前は存じ上げておりますが、面識はないもので」

「いや、そんなはずはない。ジェシカは先日の宴で―――――」


 その時、バン!と音を立ててクララの背後にある扉が開いた。驚きに見開かれたカールの表情。

 クララがビクリと身体を震わせながら振り向くと、そこにはコーエンとフリード、それからクララが買収した侍女が立っていた。


「噂をすれば」


 カールは少しバツが悪そうに、唇をへの字に曲げている。
 クララの身体から血の気が引いた。


(もしかしてサボってると思われた?だからこんな――――)


 けれど、フリードは寧ろニコニコと微笑み、クララに向かって小さく手を振っている。ホッとするのも束の間、クララの手がグイッと強く引かれた。


「えっ」

「クララは――――クララは俺のものだ!」


 コーエンはそう言って、あっという間にクララを部屋から連れ出してしまう。

 呆気にとられた様子のカールを余所に、フリードは「行ってらっしゃい」と囁きながら、小さく微笑むのだった。
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