【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(こんなの、わたしのものになってほしいって言ってるのと同じじゃない)


 この国では重婚は禁止されていない。寧ろ地位の高い男性は、妻が複数いるのが当たり前という国柄だ。

 だからコーエンは、本来手の届かぬ存在であるジェシカ王女も、手頃な存在であるクララも、どちらも欲しているのかもしれない。己のものにしたいと、そう思っているのかもしれない。
 少なくともクララを想う気持ちだけは、演技ではなく本物なのかもしれない。

 けれどクララは、そんな状態ではとても満足できそうにない。

 コーエンが自分以外の誰かに笑いかけるのが嫌だ。他の女性のために手柄を立てようと努力するのも、触れるのも、全部全部嫌だった。

 どす黒い独占欲が、己の中に渦巻いている。恋はもっとキラキラと輝いていて、楽しいだけのものだと想像していた。けれど現実は、そんなに甘いものではない。


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