【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「なっ……にを…………!」


 ワナワナと身体を震わせながら、クララは拳を握る。

 けれど、コーエンが熟れた己の唇を舐める様はあまりに扇情的で。再び湯水の如く湧き上がる言葉たちを、クララはグッと呑み込んでしまった。


「コーエン、その辺でやめとこう。クララが困っているだろう?」

「でっ……殿下!ごめんなさい!わたし、殿下に多大なるご迷惑を……!王位継承が……殿下の未来が……!」

「大丈夫大丈夫、落ち着いてクララ?」


 フリードはそう言ってクララの背をポンと撫で、ニコリと微笑む。そして、混乱と焦りで殆ど酸欠状態だったクララの瞳に滲んだ涙を、そっと拭った。


「ボクが迷惑を掛けられるとしたらコーエンだけだから。クララは何にも悪くないよ」


 そう言ってフリードはコーエンを軽く睨んだが、それは怒っているというより、どこか事態を楽しんでいるような、そんな瞳で。クララは胸の中にわだかまりを抱えつつ、ようやく冷静さを取り戻していた。


「このぐらいの迷惑料、今からの狩でチャラになるだろ?」

「うん……まぁそうだね!期待しているよ」


 パン!と手のひらを重ねながら、コーエンとフリードは笑う。


(まったく……人の気も知らないで)


 ちっとも反省している様子のないコーエンに、それを咎めるでもなく受け入れているフリード。クララは小さくため息を吐いた。

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