【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

22.姫君たちの不器用な恋

(のどかだなぁ)


 クララはぼんやりと目を細めながら、大きく深呼吸をした。

 見渡す限り美しい緑が広がり、時折小鳥たちの囀りが聞こえる。王都では得られることのない経験に、クララはうっとりと微笑んだ。

 あれからすぐ、フリードやコーエン達は本日の目的である狩のために、森の奥へと出掛けて行った。
 ここまで付いてきたものの、女性であるクララは足手まといになるため、狩についていくことは出来ない。


(茶会も、男性陣が帰ってきた後のお料理の準備も、もう終わっちゃったし)


 料理だって本当は侍女や料理人を連れてきているため、クララの出る幕はない。けれど一応形式的に、クララ達も携わった。

 こうして、ここでの仕事を全て終えた今、クララは他の女性陣達とこうしてのんびり過ごしているのである。


(コーエン達が出掛けて、もう数時間こうしているけど、このままここに住むのも悪くないかも)


 ここ数か月、城の中であくせく働いてきた反動のためだろうか。何をするでもなく、のんびりと過ごせるこの時間が尊く感じられる。


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