【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「けれど、殿下は私に一つ、役目を下さいました」

「役目?」


 カールは一体どんな役目をイゾーレに与えたのだろう。クララはそっと首を傾げる。


「はい。クララ様を必ずお守りするように、と」

「…………えぇ?」


(イゾーレがわたしを守る?)


 何がどうしてそんな話になったのか分からない。クララは盛大に首を傾げた。


「この森、出るかもしれないのです」

「出るって、何が?」

「熊が」


 イゾーレは瞬きすらせぬまま、にべもなくそう言い放つ。
 クララは身体から血の気が引いた。


「だ、だけど……熊ってもっと森の奥に出るものでしょう?ここは人里に近いし」

「実は最近、近隣の村の農作物が何者かに荒らされているらしいのです。人が盗んだにしては不自然な食い荒らされ方だそうで」

「それが熊だっていうの?」

「はい。ですから、今回の狩猟は熊の調査討伐も兼ねているのです。このままでは、里に被害が出ますから」


 狩は貴族の特権だ。害獣が出ると分かっていても、村人たちが好き勝手に狩ることはできない。それに、熊が相手では、それが訓練された人間であっても、狩猟時に命を落としかねない。


「で、でも、それとわたしを守るっていうのとは繋がらなくない?」


 いくらイゾーレが剣の訓練を受けていたとはいえ、こんな細腕で熊を討伐できるわけがない。第一、カールがクララを守るように指示する理由など、何処にもないのだ。


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