【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
侍女たちが止める間もなく、クララは再び走り出した。事態はとにかく一刻を争うのだ。
走りながらクララは、何とかして皆で生き抜く方法を考える。
(カール殿下はきっと森の奥の方で狩猟をしているはず。コーエン達も。この近くで狩をしているとしたらヨハネス殿下だと思うけど)
恐らくは彼等を呼びに行くだけの時間はない。
けれど、イゾーレを見殺しにすることもできない。
「コーエン」
届かないと分かっていて、クララは必死に名前を呼ぶ。
「コーエン、助けて」
目の前にはイゾーレと、彼女に覆いかぶさるようにしながら咆哮を上げる熊の姿。周囲一帯を震わせるようなその音に、鳥たちが一斉に飛び立っていく。
見ればイゾーレの剣は彼女の手を離れ、クララの側に転がっていた。決死の思いで剣を手に取り、クララは熊へと向かっていく。予想以上に重量のあるその剣は、クララの腕ではとても、満足に振れそうにはない。
(それでも)
静かに熊と向き合い、息を潜めているイゾーレ。クララが何もしないわけにはいかなかった。
(コーエン)
思えばクララは、一度だって彼に自分の正直な気持ちを伝えられていない。
彼の生い立ちも。家族も。ジェシカのことだって。聞きたいことは山ほどあるのに、尋ねたことは無かった。
(もしも、もう一度生きて会えたら)
今度こそ言えるだろうか。
ちゃんと、尋ねることができるだろうか。
「コーエン!」
走りながらクララは、何とかして皆で生き抜く方法を考える。
(カール殿下はきっと森の奥の方で狩猟をしているはず。コーエン達も。この近くで狩をしているとしたらヨハネス殿下だと思うけど)
恐らくは彼等を呼びに行くだけの時間はない。
けれど、イゾーレを見殺しにすることもできない。
「コーエン」
届かないと分かっていて、クララは必死に名前を呼ぶ。
「コーエン、助けて」
目の前にはイゾーレと、彼女に覆いかぶさるようにしながら咆哮を上げる熊の姿。周囲一帯を震わせるようなその音に、鳥たちが一斉に飛び立っていく。
見ればイゾーレの剣は彼女の手を離れ、クララの側に転がっていた。決死の思いで剣を手に取り、クララは熊へと向かっていく。予想以上に重量のあるその剣は、クララの腕ではとても、満足に振れそうにはない。
(それでも)
静かに熊と向き合い、息を潜めているイゾーレ。クララが何もしないわけにはいかなかった。
(コーエン)
思えばクララは、一度だって彼に自分の正直な気持ちを伝えられていない。
彼の生い立ちも。家族も。ジェシカのことだって。聞きたいことは山ほどあるのに、尋ねたことは無かった。
(もしも、もう一度生きて会えたら)
今度こそ言えるだろうか。
ちゃんと、尋ねることができるだろうか。
「コーエン!」