【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
【3章】クララの願いと王を継ぐもの

25.フリードとコーエン

 数日間の滞在期間を経て、クララたちはようやく王都への帰路についた。帰りはフリードと二人、馬車に乗る。

 コーエンはまだやることが残っているらしく、後から騎馬で帰ってくるらしい。


「お疲れ様、クララ。名目は休暇だったのに、ちっとも休めなくてごめんね」


 そう言ってフリードは、申し訳なさそうに笑う。


「いいえ。とても楽しかったです。探索もご一緒させていただきましたし」


 クララは首を横に振りながらニコリと笑った。

 例の熊騒動以降数日掛けて、クララたちは森の中を調査して回った。
 どんな生き物が生息しているのか、その数や状態。それから植物たちを、実際に歩いて見て回ったのだ。

 調査範囲は中々に広く、1日を終える度にクタクタになったが、普段とは違う頭と体の使い方ができて、クララにとっては大満足な休暇となった。


「――――ねぇ、クララにはどうしてあんな調査をしたか、分かる?」


 フリードは穏やかに微笑みながら、じっとクララを見つめる。何やら試されているような心地がして、クララは思わず姿勢を正した。


「……最初は、どうして熊が森の入り口、里の方まで降りてきたのか、その理由を確かめているのだと思いました」


 言葉を選ぶようにしながら、クララはそう口にする。

 コーエンによると、熊というのは案外臆病な生き物だし、本来、わざわざ山を降りようとはしないらしい。

 それなのに、どうして熊は人里に降りてきたのか。その理由を調査しているのだとクララは考えたのだ。


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