【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
26.流し流され公私混同
「なぁ、クララ」
数日の間に溜まっていた書類の山を片付けながら、コーエンがぼそりと呟く。けれど、コーエンの呼びかけはクララには聞こえていないらしい。熱心に羽ペンを走らせる音だけが執務室に響いた。
「おーーい、クララ」
あまりの反応の無さに焦れ、コーエンは徐に立ち上がる。先程よりも大きな声。けれど、それでもクララには聞こえていないらしい。
「――――最近根詰め過ぎじゃない?おまえ」
「…………ふぇっ!?」
耳元で唐突に響いたコーエンの声に、クララはビクリと身体を震わせた。
振り向けば、若干不機嫌そうな表情のコーエンが、クララをじっと見つめている。後からギュッと抱き寄せられ、椅子に身体が縫い付けられて動かない。
「根詰め過ぎって、どういう……」
「狩から戻って来てからさ、これまで以上に張り切って仕事してるように見えるけど、違った?」
「それは……その…………」
コーエンの見込みは間違っていない。
クララの働き方は、明らかにこれまでと異なっていた。
自分から積極的に城内を回って人脈を作り、出来る限り多くの情報を手にできるよう手を回した。そうしてできた人脈を基にいくつも仕事を持ち帰っては、時間外にひとり、それらを片付けている。
(バレないようにしていたつもりだったけど)
コーエンはちゃんと、クララのことを見てくれていたようだ。嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気持ちである。
数日の間に溜まっていた書類の山を片付けながら、コーエンがぼそりと呟く。けれど、コーエンの呼びかけはクララには聞こえていないらしい。熱心に羽ペンを走らせる音だけが執務室に響いた。
「おーーい、クララ」
あまりの反応の無さに焦れ、コーエンは徐に立ち上がる。先程よりも大きな声。けれど、それでもクララには聞こえていないらしい。
「――――最近根詰め過ぎじゃない?おまえ」
「…………ふぇっ!?」
耳元で唐突に響いたコーエンの声に、クララはビクリと身体を震わせた。
振り向けば、若干不機嫌そうな表情のコーエンが、クララをじっと見つめている。後からギュッと抱き寄せられ、椅子に身体が縫い付けられて動かない。
「根詰め過ぎって、どういう……」
「狩から戻って来てからさ、これまで以上に張り切って仕事してるように見えるけど、違った?」
「それは……その…………」
コーエンの見込みは間違っていない。
クララの働き方は、明らかにこれまでと異なっていた。
自分から積極的に城内を回って人脈を作り、出来る限り多くの情報を手にできるよう手を回した。そうしてできた人脈を基にいくつも仕事を持ち帰っては、時間外にひとり、それらを片付けている。
(バレないようにしていたつもりだったけど)
コーエンはちゃんと、クララのことを見てくれていたようだ。嬉しいような恥ずかしいような、複雑な気持ちである。