【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「最近は宰相のところにも頻繁に顔出ししてるんだろ?」

「あっ、それは……はい。お父様に仕事のこと、色々と教わろうと思って」

「ふぅーーん?」


 そう言ってコーエンはクララを抱き締め続けている。
 執務室という場所のせいだろうか。何だかものすごく悪いことをしている気がして、クララは気が気でない。

 幸いフリードは会議に出席しているし、この部屋にいるのはクララとコーエンの二人だけだが、素直に嬉しいと思ってはいけない気がする。既に正規の勤務時間を少し超えた頃合いだが、執務室にいる以上は公務中だ。


「コーエン、まだ仕事中」


 咎めるような声音でクララが呟く。

 民からの税金で給金を貰っている以上、クララはもっと己の行動に自覚と責任を持つべきだ。コーエンを王太子にしたいと願ったあの時から、クララはそう肝に銘じたし、これまでの振る舞いを反省した。


(まぁ、コーエンにとっては、わたしを繋ぎとめるのも『公』の一部かもしれないけど)


 そんな駆け引きなどなくとも、クララはもうコーエンから離れられそうにない。

 コーエン自身やジェシカとの関係を聞くより、己の恋心を大事にするよりも、クララは今、コーエンを王太子にするために動いていたい。そう強く願っていた。


「だったら、俺はいつクララとこうすれば良いわけ?」


 まるで甘えるかのような口調で、コーエンは腕に力を込める。


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