【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「わたしはあんまり好きくないな」


 クララはつい、ポロリと本音を漏らした。


「ヨハネスが?それともレイチェルの方?」


 尋ねたのはコーエンだ。

 一通り城の案内をしてもらった後、コーエンとクララはフリードの執務室に戻って来た。侍女たちが紅茶と茶菓子を用意してくれたので、休憩がてら三人でテーブルを囲んでいる。


(コーエンの奴……鋭いなぁ)


 状況からすれば、城の茶菓子が口に合わないと捉えて然るべきだというのに、的確に心の中を読んでくる。ただのひとりごとなのだから、放っておいてほしいと思いつつ、クララはため息を吐いた。


「――――二人がっていうより、お金の使い方が少し、ね」

「ボクも同感だよ。なんだか気が合いそうだね、クララ」


 そう口にしたのはフリードだった。ニコニコとクララを見つめながら、同意を求めてくる。優しそうでいて押しの強い笑みだ。


「金は天下の回りものっていうぐらいだから、ある程度は使った方が良い。けれど、それは出来る限り多くの人に喜んでもらえる形が好きだ。例えば道の舗装だとか橋の建築は、工事の発注によって新たな雇用を生むし、完成してからもたくさんの人の役に立つよね。そういう使い方がボクは好きだなぁ」
「はい、わたしもそう思います!」


 クララは思わず身を乗り出していた。

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