【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
『あの、貸出じゃなくて……この場で少しの間、閲覧させていただくだけでも良いんですけど』
甘えるような声音でクララが首を傾げる。
この場で求められるのは、女性らしさだ。そうでなければ、クララが一人で赴く意味はない。
(とはいえ、正直めちゃくちゃ苦手分野……)
口の端が引き攣りそうになるのを感じながら、クララはそっと目の前の文官を見上げる。
お転婆とまでは思わないが、クララはお淑やかな令嬢とは呼び難い。おまけに容姿に自信があるわけもなく、こんな初対面で相手を篭絡できるとは思えなかった。
『ダメです』
(…………やっぱりダメ、か)
結果は完敗だった。何やら普通に断られるよりも敗北感が強い。がっくりと肩を落としつつ、クララは急いで気持ちを切り替えた。
『分かりました。だったら、各都市の財政状況について分かる資料を貸してください。そちらは閲覧制限がありませんよね?』
クララは文官を真っ直ぐに見上げ、もう一度フリードからの申請書を差し出す。
貴族が上げる報告書には、己の収支報告とは別に、もう一つ種類がある。
それは、領地を持つ貴族が、領地内の税収や流通品目、経済の状況等について記したもので、こちらは基本的に身元が確かであれば閲覧が可能らしい。
この報告書があれば、密猟が確認された土地の住人の暮らしぶりが見えてくる。彼等がどうして密猟を行ったのか、その理由も推測が可能となるはずだ。
『そちらもダメです。お見せすることはできません』
けれど文官は、鬱陶しそうに眼鏡を上げながら、そう言い放った。
甘えるような声音でクララが首を傾げる。
この場で求められるのは、女性らしさだ。そうでなければ、クララが一人で赴く意味はない。
(とはいえ、正直めちゃくちゃ苦手分野……)
口の端が引き攣りそうになるのを感じながら、クララはそっと目の前の文官を見上げる。
お転婆とまでは思わないが、クララはお淑やかな令嬢とは呼び難い。おまけに容姿に自信があるわけもなく、こんな初対面で相手を篭絡できるとは思えなかった。
『ダメです』
(…………やっぱりダメ、か)
結果は完敗だった。何やら普通に断られるよりも敗北感が強い。がっくりと肩を落としつつ、クララは急いで気持ちを切り替えた。
『分かりました。だったら、各都市の財政状況について分かる資料を貸してください。そちらは閲覧制限がありませんよね?』
クララは文官を真っ直ぐに見上げ、もう一度フリードからの申請書を差し出す。
貴族が上げる報告書には、己の収支報告とは別に、もう一つ種類がある。
それは、領地を持つ貴族が、領地内の税収や流通品目、経済の状況等について記したもので、こちらは基本的に身元が確かであれば閲覧が可能らしい。
この報告書があれば、密猟が確認された土地の住人の暮らしぶりが見えてくる。彼等がどうして密猟を行ったのか、その理由も推測が可能となるはずだ。
『そちらもダメです。お見せすることはできません』
けれど文官は、鬱陶しそうに眼鏡を上げながら、そう言い放った。