【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
『どうしてですか!?』


 クララにはもう、上品に振る舞うことなどできなかった。グッと文官との距離を詰め、眉間に皺を寄せつつ唇を尖らせる。
 すると、文官はクララから顔を背けながら、小さくため息を吐いた。


『大臣が――――スチュアート様がダメだと仰っているからです』

『はぁっ!?』

(何それ!?なんなの、それ!?意味が分からないんですけど!)


 クララは開いた口が塞がらなかった。

 財務大臣のスチュアートとはつまり、レイチェルの父親だ。とにかく金に目がないことで有名で、役職柄、国に与える影響も大きい。


『理由は――――大臣が閲覧制限を設けた理由を御存じですか?』


 ピンと背筋を伸ばし、クララは尋ねる。
 これでもクララは宰相の娘だ。最近は政について父からも学んでいる。


(だってこれは、貴族だけじゃない。本来、国民全員に公表して然るべきものだもの)


 非公表とするならば納得のいく理由が必要だ。ただで引き下がるわけにはいかなかった。


『大臣が仰るには、王位継承戦において不正があってはいけないから、と』

『王位継承戦に不正……?』


 言われた言葉の意味が分からず、クララはしばらく放心状態のまま佇む。


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