【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(意味が分からない!どうしてそういう話になるの?)


 この場でクララは、王位継承戦の話など一言だってしていない。おまけにレイチェルの父親はここにはおらず、文官が大臣に判断を仰ぎに行くこともなかった。

 だとすれば、残る選択肢は一つ。

 レイチェルの父親はかなり前から、フリードやカールへに対する財政資料の閲覧制限を言い渡していた、ということになる。


『いいですか?財政資料というのは、ただの数字の羅列ではありません。どの貴族がどのように力を持っているのか、どの土地にどれ程の価値があるのか、人々がどんな暮らしをしているのか――――その全てが詰まっています。無暗に閲覧させれば、フリード殿下やカール殿下は、王位を手にするため、力を持った貴族や商工会と手を結ぼうとするかもしれない。私腹を肥やそうと企むかもしれない。ならば、少なくとも王位継承戦の間は、殿下方に資料を閲覧させるべきではない。それが大臣の考えです』


 悦に入ったかのような口調に、クララのイライラは頂点に達する。


『ヨハネス殿下だけが数字の恩恵を受けることができるなんて、不公平じゃありませんか!』


 有力な後見を手にしようとすることは、何ら悪いことではない。そのために、クララたちは王子たちの内侍として務めているのだし、己の益になる人物を見定めることも、王として必要な能力だろう。

 彼は先の説明において、閲覧制限の対象を『フリードとカール』と限定した。つまり、ヨハネスならば、資料を閲覧させることも、そこから得られる恩恵を受け取ることも問題がない。そう思っているらしい。


『どうしてヨハネス殿下だけ、そのような優遇を受けられるのでしょう?そちらの方が余程おかしい!正当性がないと――――』

『正当性?ヨハネス殿下はスチュアート家を外戚に選ばれました。それが一番『正しい』ではありませんか?』


 さも、真理を語るかのような瞳で、文官は首を傾げた。

 クララが一刻も早く、財部を後にしたいと思ったことは言うまでもない。



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