【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「殿下には何でもお見通しなのですね。けれど……わたしに殿下の望むような利用価値があるのでしょうか?条件とは?」


 この数か月の間にコーエンの側で学んだ交渉術。それが段々とクララの中に根付きつつある。


(まだ、こちらの要求を出してはいけない)


 ヨハネスが何を考えているのか、対価として差し出せるものがあるのか、そちらを先に引き出してしまう。相手に打算的な人間だと悟られているならばそれで良い。互いに腹の探り合いをして、最大限に利益を調整すれば良いだけだ。


「僕はね、君のことを気に入っているんだ。未来の王妃として申し分ない強さと、美しさ。その計算高さも好ましい。こんな風に僕が素を出せる人間は貴重だし、政治を行う上での利用価値も高い。だから――――」


 ヨハネスはそう言ってグイッとクララを引寄せる。机が大きく揺れ、体勢を崩しながら、クララは眉間に皺を寄せた。


「フリードが王太子の位を手にできなかったその時は、君は僕と結婚する。そう約束してほしい」


 鳶色の瞳が真っ直ぐにクララを見つめる。クララはゴクリと唾を呑みながら、ゆっくりと口を開いた。


「それは――――仮にカール殿下が王太子の位を手にした場合においても、わたしはヨハネス殿下と結婚する……そういう意味でしょうか」

「そういうことになるね。フリード以外の誰が王太子になっても、君は僕と結婚する。どうだろう?」


 その瞬間、クララの脳裏に浮かんだのは、コーエンの笑顔だった。


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