【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
(しかし、コーエンって一体何者なんだろ?)


 先程の発言は一歩間違えれば、王子であるフリードの考えを否定するかのように聴こえかねない。一切の物怖じをせず、理路整然と自身の意見を述べている様は、見ているこちらがハラハラする。

 チラリとフリードを見れば、彼は機嫌よさげに微笑んでいた。意に介すどころか、寧ろ誇らしげな表情にすら見える。


「コーエンはすごいだろう?ボクはいつも簡単に言い負かされてしまうんだ」


 クララの考えていることが伝わったのだろうか。フリードはそう言って眼を細める。横目でコーエンを見ながら、クララは小さく頷いた。


「幼い頃からずっとそうなんだ。それなのに、当のコーエンはあまり前に出ようとしなくて、ボクはそれがもどかしくてね」

「俺は現状に満足してるの。前に出ることも後ろに下がるつもりもない」

「またそんなこと言って。王太子になったら嫌でも前に出てもらわないと」


 フリードはため息交じりにそう言うと、ゆっくりとクララに向き直った。


「それからクララ」

「え……はい」


 改まった様子で話を切り出され、クララはピンと姿勢を正す。フリードは穏やかな、けれども真剣な表情でクララを見つめた。


「コーエンはさっきあんなことを言っていたけど」

「あんなこと?」


 クララがそう呟きながら首を傾げるが、フリードは構わず身を乗り出す。


「ボクはね、必然から始まる恋もありだと思うんだ」


 そう言ってフリードはクララの手を握った。心臓がドキッと音を立てて小さく跳ねる。手のひらがほんのりと温かかった。


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