【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「ごめっ……。本当は分かってるの。こんなの八つ当たりだって。だけど、だけど――――」

「良いから。俺の前でまで我慢するな」


 コーエンはそう言ってそっとクララを抱き締める。慣れ親しんだ温もりに、心が身体が安心する。


「コーエン」


 ポン、ポンと背中が撫でられて、クララの心が満たされる。

 コーエンならばきっと、こんな不条理を正してくれる日が来る。王となり、クララのために――――皆を守るために戦ってくれると信じられた。


「コーエン……好きっ。大好きっ」


 縋るようにしてコーエンを抱き締めながら、クララが感情を吐露する。耳のすぐ側でバクバクと音が聞こえる。コーエンの心臓の音だった。


「好きなの……コーエンのことが。すごく」


 好き、と続くはずだった言葉は、コーエンの唇に呑み込まれてしまう。

 心臓が甘く、切なく軋む。

 絡めるように繋がれた手のひらが温かくて、とても優しくて、苦しかった。


「――――っ、あんまり煽るな。抑えが利かなくなる」


 熱い吐息と共に吐き出されたセリフ。聞きながら、クララはポロポロと涙を零す。


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