【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「抑えなくていいよ」


 その言葉が何を意味するのか。貴族の令嬢として、どれほどはしたないことなのかを、クララはきちんと理解していた。

 だけど、誰に後ろ指を指されようと構わなかった。

 今、この時だけでも良い。コーエンのものになりたい。愛された記憶が欲しい。
 そう思ったところで、誰がクララを責められよう。


「~~~~~~っ!~~~~~~~~~~~~っ‼」


 コーエンは声にならない叫び声を上げながら、唇をギザギザに引き結ぶ。顔を真っ赤にして、何度もクララを見下ろしながら、フルフルと首を横に振る。


「コーエン……」

「あーーーーーー‼だめっ!ダメったらダメ!やっぱり、何度考えてもダメなものはダメだ!」


 コーエンはそう声を荒げながら、深々とため息を吐くと、じっとクララの瞳を覗き込む。ほんのりと紅く染まった頬と濡れた瞳。眉間には苦し気に皺が刻まれている。


(もしかして、呆れられた?)


 不安に駆られてそっと見つめ返すと、コーエンは困ったように笑いながら、ギュッとクララを抱き締めた。


「コーエン?」


 相変わらず、コーエンの吐息は熱い。聞いているだけで、クララの胸を熱く焼いてしまう。

 コーエンは少しだけ身体を離すと、もう一度クララの瞳を真っ直ぐに見つめた。


「変なこと言ってごめんなさい……だけど、わたしは」

「違う。違うんだ、クララ」


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