【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「クララは今まで出会った中で一番美しいし、明るくて聡明な素敵な女性だと思う。惹かれるなっていう方が難しいよ」
「え……えっと」
こういう時、どんな風に返せばよいのだろう。平静を装いつつ、クララの頭の中は軽くパニックに陥っていた。
夜会ではいつも『どうせ社交辞令だから』と軽くあしらえる。けれど、今対峙している相手は仮とはいえ己の婚約者であり、この国の王子だ。笑い飛ばすことも、下手にお礼を言うことも憚られる。
「誰かに用意された出会いであっても、あとから振り返ってみたら運命だった。……そんなこともあるんじゃないかな?」
「それは……」
フリードの言う通りなのかもしれない。
けれど、クララはまだ『この道しかない』とは思えないし、思いたくない。フリードを好きにならなければならない、と自分を追い込みたくなかった。
チラリと隣を見ると、コーエンは退屈そうに茶を啜っている。まるで興味が無さそうなその様に、何故だか無性に腹が立った。
「そういうこともあるかもしれませんね」
クララはそう言って、心とは裏腹な満面の笑みを浮かべる。ピリピリとささくれた心を撫でながら、視線はついコーエンを追ってしまう。
「……何事もボク次第ってことなのかな」
フリードはニコリと微笑みながらそう口にすると、優雅な動作で身を乗り出す。次いで響く、チュッという小さな音。温かく柔らかな何かが頬に押し当てられていたことに気づいたのは、その後だった。
思わぬことにクララは眼を見開き、ややして真っ赤に頬を染める。
「覚えておいて。ボクがこの婚約を運命に変えて見せるから」
心臓がいつになく早く鼓動を刻む。先程までやたら五月蠅かったコーエンが助け舟を出してくれそうな様子は全くない。
クララは為す術なく、コクコクと頷くことしかできなかった。
「え……えっと」
こういう時、どんな風に返せばよいのだろう。平静を装いつつ、クララの頭の中は軽くパニックに陥っていた。
夜会ではいつも『どうせ社交辞令だから』と軽くあしらえる。けれど、今対峙している相手は仮とはいえ己の婚約者であり、この国の王子だ。笑い飛ばすことも、下手にお礼を言うことも憚られる。
「誰かに用意された出会いであっても、あとから振り返ってみたら運命だった。……そんなこともあるんじゃないかな?」
「それは……」
フリードの言う通りなのかもしれない。
けれど、クララはまだ『この道しかない』とは思えないし、思いたくない。フリードを好きにならなければならない、と自分を追い込みたくなかった。
チラリと隣を見ると、コーエンは退屈そうに茶を啜っている。まるで興味が無さそうなその様に、何故だか無性に腹が立った。
「そういうこともあるかもしれませんね」
クララはそう言って、心とは裏腹な満面の笑みを浮かべる。ピリピリとささくれた心を撫でながら、視線はついコーエンを追ってしまう。
「……何事もボク次第ってことなのかな」
フリードはニコリと微笑みながらそう口にすると、優雅な動作で身を乗り出す。次いで響く、チュッという小さな音。温かく柔らかな何かが頬に押し当てられていたことに気づいたのは、その後だった。
思わぬことにクララは眼を見開き、ややして真っ赤に頬を染める。
「覚えておいて。ボクがこの婚約を運命に変えて見せるから」
心臓がいつになく早く鼓動を刻む。先程までやたら五月蠅かったコーエンが助け舟を出してくれそうな様子は全くない。
クララは為す術なく、コクコクと頷くことしかできなかった。