【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

32.同族嫌悪→好?

 それから数日間、コーエンは執務室に姿を見せなかった。


「ちゃんと話は聞いてるから。クララは心配しなくて大丈夫だよ」


 フリードはそう言って微笑む。


(うーーん……コーエンったら、殿下には一体、なんて説明してるんだろう……)


 あの日の二人のやり取りを説明するのは聊か障りがある。

 クララの願いは、フリードを退けてコーエンが王位を手にすることだし、他にも、後から思い返せば赤面物のやり取りばかりだった。


「コーエン、めちゃくちゃ張り切ってたよ~~」


 揶揄するような、楽し気なフリードの声。どこか意地の悪い笑みに、クララの鼓動が早くなる。


「楽しみだよね~~~~!早く見たいなぁ!クララの花嫁姿」


 ニコニコと屈託のない笑みがクララの心臓を抉る。


(殿下は、何を、どこまで御存じなんだろう!?)


 クララは人知れず頭を抱えた。


(そもそも)


 3人の王子たちの中で、フリードが一番掴みどころがないようにクララには思える。
 王位継承戦に乗り気なようでいて、あまり執着を見せない。それどころか、いつも脇役に徹しようと振る舞っている節すらある。


(今回のことだってそう)


 フリードがコーエンから何を聞いているかはわからない。
 けれどフリードは、自分ではなく寧ろコーエンに王位を継承してほしいと思っている――――そんな風にクララには見えた。


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