【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「もちろん、あんたには内侍としての仕事をしてもらう。ここにいる、フリード殿下の婚約者として、相応しい働きや教養を見せる――――それがあんたの仕事だ」
金髪の青年は、不敵な笑みを浮かべながらそう言い放った。先程クララを凍り付かせた内容と同じものだ。
(そんな!私、婚約なんて聴いてないわ)
父から出仕の話を打診されたあの日から今日まで、そんな話は一切聴いていない。クララの頭に痛みが走った。
「知らなかったようだがな、この国の内侍ってのは、妃としての顔もあわせ持つんだぞ?」
呆けたままドアの側から動くことすらできないクララの元に、金髪の青年が歩み寄る。上質な革製の靴が間近に見えて、クララは顔を上げた。
「内侍ってのはいわば、妃になる前の箔付のための役職だ。王や王子のお眼鏡にかなって、きちんとその役を務められたものが、妃へと駒を進められるってわけ。おめでとう、クララ。おまえの将来は明るいぞ」
男の凶悪的な碧い瞳が憎らしい。クララは唇をギザギザに引き結んだ。
「こらこら、コーエン。そういう意地悪を言わないの」
そう言ってフリードが、困ったように笑う。コーエンと呼ばれた男性は「へいへい」とため息交じりに笑いながら、クララを部屋の中央へ引き摺った。
「ごめんね。クララが婚約に乗り気でないことは公爵から聴いていたんだ。けれど、どうしても君の力が必要だったから……ボクが無理を言ったんだよ」
応接用のソファへ座るよう促され、クララは恐る恐る腰を降ろす。向かいにはフリードが。そして隣にはコーエンがドカッと腰を降ろした。
「自己紹介が遅れたね。ボクはフリード。この国の第3王子だ」
よろしく、と差し出された手のひらを、クララはまじまじと見つめる。
(秘書としての役割だけなら、いくらでも握り返すつもりだったのに)
この手を取ってしまえばもう、後戻りできないのではないか。そんなことを考えると、ついつい尻込みしてしまう。
金髪の青年は、不敵な笑みを浮かべながらそう言い放った。先程クララを凍り付かせた内容と同じものだ。
(そんな!私、婚約なんて聴いてないわ)
父から出仕の話を打診されたあの日から今日まで、そんな話は一切聴いていない。クララの頭に痛みが走った。
「知らなかったようだがな、この国の内侍ってのは、妃としての顔もあわせ持つんだぞ?」
呆けたままドアの側から動くことすらできないクララの元に、金髪の青年が歩み寄る。上質な革製の靴が間近に見えて、クララは顔を上げた。
「内侍ってのはいわば、妃になる前の箔付のための役職だ。王や王子のお眼鏡にかなって、きちんとその役を務められたものが、妃へと駒を進められるってわけ。おめでとう、クララ。おまえの将来は明るいぞ」
男の凶悪的な碧い瞳が憎らしい。クララは唇をギザギザに引き結んだ。
「こらこら、コーエン。そういう意地悪を言わないの」
そう言ってフリードが、困ったように笑う。コーエンと呼ばれた男性は「へいへい」とため息交じりに笑いながら、クララを部屋の中央へ引き摺った。
「ごめんね。クララが婚約に乗り気でないことは公爵から聴いていたんだ。けれど、どうしても君の力が必要だったから……ボクが無理を言ったんだよ」
応接用のソファへ座るよう促され、クララは恐る恐る腰を降ろす。向かいにはフリードが。そして隣にはコーエンがドカッと腰を降ろした。
「自己紹介が遅れたね。ボクはフリード。この国の第3王子だ」
よろしく、と差し出された手のひらを、クララはまじまじと見つめる。
(秘書としての役割だけなら、いくらでも握り返すつもりだったのに)
この手を取ってしまえばもう、後戻りできないのではないか。そんなことを考えると、ついつい尻込みしてしまう。