【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~

4.練武場と笑顔

(この婚約を運命に変える……か)


 クララは頭の中でポツリと呟く。
 目の前では見目麗しい、クララと同年代の騎士たちが剣を振るっている。もしかしたらこの中に、運命の相手がいるかもしれない。そう思っているのに、折角の光景が全てぼやけて見えた。


(それもこれも、全部殿下のせいなんだから)


 クララは唇を尖らせつつ、大きなため息を吐く。


(だってわたし、あんな風に口説かれたことなんてないんだもの)


 一連のやり取りを思い出すと、知らず頬が紅く染まった。

 箱入り令嬢の恋愛偏差値は皆無に等しい。当然経験値はゼロで、持っているのは、両親や侍女たちから聞きだした経験話や、書物から得た理想ぐらいのものだ。
 フリードの言動は、クララの理想からかけ離れているわけではなく、寧ろ想い描いていたものに近い。

 けれど、きっとフリードは、クララではない他の令嬢が相手だったとしても、同じことをした。婚約者として相手を大切にするし、恋慕の情を抱こうと努力しただろうと思う。

 既定路線上の想い。成るべくして成った恋。それがクララは気に喰わない。幼い考え方だと分かっていても、クララはまだ現実を受け入れたくなかった。


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