【コミカライズ決定】王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
「マッケンジー家は何代にもわたる王家の忠臣。とても、そんなことをするとは思えない。だから俺たちは、ここ数年分のマッケンジー家の資産状況を調べた。密猟の許可を与えるならば、そこから得た収益の一部を領民たちに要求して然るべきだからだ。けれど、マッケンジー家の収入状況は変わらない。寧ろ減少していた」

「財務資料を検めたのか!?あの資料には、閲覧制限が……っ!」

「まぁまぁ、義父上。そこらへんの事情は、もう少し後で解説しますよ」


 扇で口元を隠しながら、ヨハネスが微笑む。


(そこら辺の事情?)


 ヨハネスは資料を借り受けた張本人だ。何やら含みのある物言いに、クララは唇を尖らせる。すると、ヨハネスはクララを流し見ながら、小さく笑った。


「一方、数年前を契機に、とある貴族の収入と資産が大幅に増加していた。他の資料と照らし合わせて見ると、明らかに数字がおかしな部分が幾つも隠れている。もう、誰のことかお分かりですね?」


 伯爵がブルブルと震えている。クララの心臓がザワリと騒いだ。


「俺は密猟をしていた民に尋ねた。『密猟で得た収益を、誰に渡しているのか』と。皆が口を揃えて、あなたの名前を上げたよ。しかも、法外なノルマまで課していたとか――――」

「でたらめを言うな!そんなバカなことが……」

「ここまで分かればもう、言い逃れはできない。マッケンジーは教えてくれた。――――最初は生活に困った領民の一部に、一時的な密猟の許可を与えただけだった。けれど、それがあなたにバレた。そして、国王に罪を明かさない代わりに、密猟の継続と、広範化、収益とマッケンジー家の収入の一部をあなたに納めるように強要されたのだと」


 コーエンはそう言って眉間に皺を寄せた。

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